5)布陣:スカンクワークスチームと呼ば開発開発体制
集結体制
とりあえず、開発はオーソライズされて、スタートした。
先々行車を設計する。プラットフォーム開発/パッケージ確認車である。
今度は 0号車と違って、TC(トヨタテクノクラフト)得意の一品料理、1台だけ手創りするのではない。
開発体制、もすべて考え直した。 通常のレクサス車とは違ったチームとも言える
最小人数での開発体制を考えなくてはいけなかった。なぜなら、それが開発スタート条件であったからだ。
社内でなくてはできないこと、TC、ヤマハ等に頼むことの見極めが求められた。
それ以外に、新たな協力者(社)を探さねばならないこともある。
そう、開発体制と言うより、開発チーム創り、協業開発チーム結成して行くことになった。
プロジェクトに参画してもらう会社、部署によって、かかわりたい度に大分温度差がある
でも、参画してもらえるだけありがたかった。
中心になるTCメンバーにとっては、マスプロに向けた開発は、初めての経験になる。
ベース車から、救急車であったり、特別使用車なりモータショーカーなどを設計していたので
ある意味通じる部分とはいえ、今までの文化とは異なる環境への対応で設計者は戸惑いを隠せなかった。
でも、彼等しか設計する人は居ないのである。ボデー関係・電気電子関系の設計に加えて、
通常は社内でしか設計しないサスペンション設計も彼等の手に任された。
ベテランももう一度初心に返って、レクサス開発のやり方を学んで行った。
開発・評価もいままでとは違う舞台(サーキット)が主体になる
スポーツの基準を今までのトヨタの基準と照らし合わせながら
今までの性能前提とは違うので、新たに作ったり、見直す作業もしないといけない。
社内のメンバーが開発したとしても、戸惑うことは多い環境である。
やることは、いっぱいある。人が少ない分、メンバーの情熱に頼ることになる。
その分、個人の見る範囲、他の人のやっていることが見える。モチベーション維持には好都合である。
エンジンもいよいよ正式に試作機を作成する。
ヤマハに正式に、いままでの枠を越えた開発をお願いする。
ヤマハのK氏と、レクサスYセンター長との顔合わせを、静かな宴席で行なった。
エンジンのベースを今までのV8から、新たにLS用に開発されるブロックに変更することを決めた。
直噴、ツインインジェクタ。燃費とパワーの両立に不可欠。新スポーツエンジン開発に挑戦する。
エンジン特性を得るためには、検討会で得られた結論どうりシリンダヘッドの新設をすることにした。
エンジンと駆動系は メーカーでしか新設できないし、スポーツの特性を決める肝と考えている
エンジン開発の実行部隊を率いるのは、Aさんである。のっけから本音で話し合える雰囲気の人間である。
ブレーンストーミングを ”無礼ストーミング”と称して、お互いに立場でなく、単なるスポーツカー好き
者同士として、お互いのコンセプトを言いたい放題、ぶつけ合って幾度となく話しが続けられた。
場所は、ヤマハコミュニケーションプラザ。1Fにはトヨタ2000GTも飾られていた。
このクルマのもうひとつのキーファクターはトランスミッションである。
スポーツカーに見合ったトランスミッションが欲しかった。
これには、やはりチェイサーを開発していた頃から考えていたひとつの腹案があった。
それは、オートマチックトランスミッションをロックアップクラッチ使ってマニュアル操作すること。
最初に話を持って設計に持って行ったときには、なにそれ・・耐久がダメだね・・・話にも
成らなかった。トランスミッションの専門家の検討時間が限られていて検討してもらえない。
ならば、アイシンAWに直接交渉にむかった。ここでは担当者は乗り気(エンジニアだな!)
でも、会社として何処まで対応できるかは なかなか良い返事はもらえなかった。
ポルシェ911をアイシンに持っていき乗ってもらって、0号車にも乗ってもらって
現物プレゼンを繰返し、なんとか検討はしてもらえることになった。
ここで、また協力してくれる駆動のエンジニアが現れた。Tさんである。彼は製品企画GSの経験もあり
今の開発状況を理解してくれ、エンジニアとしての新規項目に意欲を持ってくれた。
駆動系を統括する執行役員に代わってきた高橋も、この新しい挑戦にGoをかけてくれた
心強い味方になって、このシステムの完成をバックアップしたくれた。
Tさんと実験のメンバーが一体になった、実際の検討はアイシンAWのメンバーが当ってくれた。
担当者はみんな新技術のスポーツミッションの開発が面白くてしょうがないのである。
AT屋の意地である。ATだってスポーツできる、ATの未来を見つけたぐらいの勢いである。
Tさんらも自ら試作車のハンドルを握り、サーキットを走った。トランスミッション関係者は
皆、設計実験関係なく、みなハンドルを握り楽しさを追求するミッションを開発していった。
評価部隊は、レクサスセンターが主体になった。評価は設備も含め膨大に必要でありTCでと
いうわけには行かなかった。そのかわり評価の勉強としてテクニシャンが3人TCからやってきた。
Nさんに頼んでいた操縦性のチューニングも、NさんがLFAに集中することになり
評価体制をレクサスセンターの中で組み直すことになり、専任者としてMさんとYさんが担当することに
なった。MさんはNさんの下で最初のドライバー教育を受けた直系のベテランである。
Yさんはまだ、伸び盛りのドライバーである。
また、実験部出身で、定年後も関連会社で腕を振るっていた古豪のエンジニアTさんが
操縦性の解析の専任として加わり、サーキット走行でクルマになにが起こっているのかの事実を
データロガーなどレーシングカー開発と同じ手法で解析を行なうことになった。
この結果はFEMの計算結果と見比べられ、FEMの計算前提&結果の精度を向上させる要因にもなった。
少数精鋭・・という弱小チーム! 情熱だけが開発力
投稿者プロフィール
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元トヨタ自動車株式会社 IS F, RC F, GS F開発責任者 矢口幸彦
個人事務所ならではの『One to One』のサービスで、ワクワクしながら笑顔になれる働き方をお手伝いします。
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