4)原点

原体験

自分の考えるクルマは、正しい道具としてのクルマと、道具を越えた使い方のクルマが両極にあり その間にどうポジションニングしているかではないだろうかと思っていいる。

子供の頃は、まずおもちゃとしてのクルマ(おもちゃ)に接しはじめた。 でも、乗ることはできなくても、使い方や乗っている想像は広がった。 おもちゃのクルマは、それだけでなく、分解されて構造がつまびらかになった。 ドライバー一本でボデーを分解し、ぜんまいまでもバラバラにしてそこにも興味が 広がっていた。 

プラモデルは早創りが得意であった。カラーリングしてとかリアル感を 追求する段階ではなく、物を組み立てることに熱中していた。 小学校時代には、走るクルマの名前を言い当て、エンジン音も聞き分けた。 でも、そこは自分の知っているクルマだけで、日本車は車名で言えたが 輸入車は外車であった。

中学に入り、小使いでクルマの本が買えるようになるが、毎号は買ないのでず立ち読み により厳選された。そして一冊のバイブルを買った。日本のスポーツカー?と言う本である。 トヨタ2000GT,フェアレディZ、スカイラインGT、コロナマークⅡGSS等など が掲載された B5版の本であり技術解説、計測データ、インプレッションなどが記載され  大切に何度も読み返された。今でも大切に持っている。

その頃の我が家のクルマは、中古のマツダB360からスバル360に変わりついに 新車のスバル360に変わっていた。この年に亡くなった親父が買った最初で最後の新車である。 自分は、叔父から、ナンバーを外したPT20コロナバンを貰い受け、限られた工具でバラバラ化が 始まっていた。クルマの運転も友人宅のパブリカトラックをクローズドされた田んぼ後で乗り回した。

学校では科学研究と称して、鉄フレームに自転車タイヤ+スーパカブエンジンのクルマを創り乗り回す チームに対抗し、ラビットスクータをベースにFr2輪の3輪車を創り出したりして校庭で 試走したりした。もっとも、最初はラビットのエンジンがガブのエンジンとは違い バッテリ点火であることが解らず、エンジンもかけられ無かったりした。 このクルマはクラブ活動の成果として、文化祭にどうどうと展示されていた。 いつも、クルマはおもちゃであった。

トヨタ2000GT 出典 Gazoo
マークⅡ GSS 出典モーターマガジン

加速

会社に入ってからも、50年排気ガス規制をクリアして蘇ったTE51レビンを入社式の前に購入した。 そのクルマはラリーサスにダンロップR3、ヘラーのドライビングランプ等などいじりまわして お金がなく、いつも先輩宅を回って御飯を食べさせてもらっているような時もあった。

レビンには思い出があった。TE27レビンが高校時代に発売になった。 それまでのトヨタ車にないハードさ、カローラのボデーにDOHCエンジンにトキメイタ。 こいつを何時か買いたい、乗りたいと始めて思ったクルマである。 でも、レビンはTE27はTE37になり、生産中止となっていた。中古車は高価であった。 それが、復活するというので喜んで買いに行ったクルマであった。

もともと運動音痴であるから、運転だって直には上手くはならない、走って走って そこそこには走れるようになっていたつもりでいた。今思えば、幼稚なレベルで有ったけど。 でも、この機械の塊を 思いどうりに動かすことは楽しかった。

ポルシェ914も買った。回りにフィアットX9、ロータスヨーロッパに乗った先輩がいて そんなクルマが欲しかったが同じクルマは嫌だった。 当時まだ珍しい中古の平行物で1.7という鈍亀だったが、まったく違った乗り物だった。 10万kmを走行していたが、ポルシェなのである。ヨーロッパ車はすごい、素直に思った。 自分で買うことのできないクルマは会社の参考購入車に乗って確認した。

ポルシェもフェラーリも アルファロメオ、ランチア、BMW,Benz 数はわからない。 マイカーは14台以上のトヨタ車に乗り継ぎ、チェイサーの開発をしていた頃には、BMWも持っていた しかし、BMWへの機械としての完成度を理解しながらも、機械に従わされるような違和感を感じ アルファロメオを購入し、ラテンのクルマとの付き合い方を理解したりした。

自分の欲しいクルマがだんだん見えてきていたのがちょうど、レクサス企画部を設立した頃だった。 所属していたCGClubの集まりで、色々なクルマを持った濃い仲間とも出会い 一人一人違う付き合い方に関心したりもした。身体的障害をもたれた人もいたが その方が、ロールゲージ付きのポルシェ911できて、クルマイスをシュット出すのが 実にカッコよかった。クルマを楽しんでいるのがよくわかった。 そして、自分の結論が見えてきた クルマ好きな人、みんなが楽しく乗れて、おもちゃとしても使えるクルマを創りたい であった。

TE51 レビン 出典トヨタ自動車
ポルシェ914 出典ウキベディア
アルファロメオ156 出典アルファロメオ

LEXUS IS F 開発備忘録 目次はこちら

これから順次アップしていきます。
2015~2016年カートップ誌に連載していたストーリーの原文になります。あえて当時書いたままの文章です。

投稿者プロフィール

office F.Regulus 矢口幸彦
office F.Regulus 矢口幸彦
元トヨタ自動車株式会社 IS F, RC F, GS F開発責任者 矢口幸彦
個人事務所ならではの『One to One』のサービスで、ワクワクしながら笑顔になれる働き方をお手伝いします。