12)追記:IS F CCS-R、RC F, GS Fと続く想い

IS F CCS-R~私の造りたかった、最良のクルマ 楽しくて仕方が無い

最新のIS Fが最良のIS F 。新型のIS Fが高評価を得られれば 歴代車オーナーの財産価値を守ることができる。

楽しさの基準で先頭を走る為には、走り続けて 気づいたら進化させる。 IS F は走り出したばかりの まだまだ駆け出し、 経験不足はいなめない。今を無駄にはできない 走った距離だけ、経験した時間だけ進化させて蓄積させる 。

それは、次期開発を高いスタート点からスタートさせることにも繋がる 0⇒1は 存在させることその物でも驚きにすることができる。 でも、継続するのには、1⇒ 2では 驚きはない、100にして初めて驚いてもらえる 1⇒ 100にする為には 高いスタート点と経験の蓄積が必要。

こんな想いで改良をつづけてきました。 そして”F"コンセプトの原点であるレーシングカー体験も進化させています 。

チェイサーJTCC、IS Fレーシングコンセプトに続くモデル Fコンセプトを究極化した、 IS Fの究極形を開発することにしました。

誰でも乗れるレーシングカー IS F CCS-Rです 。当初はナンバー付でこのコンセプトを実現化する構想だったのですが 法規も含めて、まだまだこの土壌は十分でなく ふたつに分化させることにしました 1つは 誰でも乗れるレーシングカーCCS-R。 そして、もうひとつが CCS-Rのエッセンスを公道用にした CCS-Part。

開発にはTRDを中心に行いました。 テクノクラフト(TRD)はベース車のIS Fを設計しており IS Fを知り尽くしている。そこに自分たちのノウハウを足し算し、彼らの夢もいれてを作り上げてくれました。

CCS-Rは本格レーシング装備、安全性と 誰でも扱える 操縦性、安心感を備える為に レースカーの軽量、高剛性ボデー/、シャシーに 市販のエンジン、オートマチックトランスミッションを 載せたユニークな新ジャンルレーシングカーです。

この開発は、ニュルブルクリングで開催される耐久シリーズ戦VLNを 中心に行われましたので、実力も十分です 。耐久レースは苛酷な環境下評価になるのでFの市販モデル開発にも重要は評価ができ 、市販車の開発にも多くのことがフィードバックできました 。

市販車のユニットを使用する意味がこの為にもあるのです。 2009年からIS F改造のテストカーで参戦開始し 2011年にCCS-Rとして正式に創った車両を初めて持ち込むことができました。

ドイツではニュルの近くにレーシングガレージを構える RingRacingとガッチリとタッグを組むことができ お互いの知見を組み合わせて継続的な参戦開発がすすめられました。

また、日本やドイツ、スイス、等多くの国からの ジェントルマンドライバーに乗って頂くことで 乗りやすさに拍車をかけました 。

年間10戦行われるVLNシリーズに年間参戦するようになり 完走率の高さや、レースにスポット参戦でCCS-Rに 乗ったジェントルマンドライバーの評価などで 現地でも認知してもらえるようになりました 。

VLNレースには多くのクラス分けがあり、CCS-RはSP8クラスの参戦なのですが 、このクラスは、アストンマーチン、フェラーリ、アウディR8等が参戦しており、 強敵相手に速さでは一歩譲りますが、信頼性で勝り クラス優勝できるようになりました 。

さらに2013,2014、2015年と3年連続して SP8クラスの シリーズチャンピオンカーとなることができ 、開発としてもひと段落となりました。

CCS-RはFモデルの市販車開発の現場でも Fの次期モデルベンチマークとして 多くのエンジニアが体感することで コンセプトを浸透させるのにも大活躍をしました。

次期Fモデルを考える時期となり IS Fで始めたFモデルを1代で終わらせることはできない 関係部署と議論を開始しました 。

幸いにも、レクサス各車に設定した F SPORTも好調で、 Fのピラミッドが社内でも浸透して Fモデルの役割が明確になってきていました 。

いよいよ次期モデルへ、バトンタッチする開発を進めることになりました。 通常ならば IS Fのモデルチェンジを行うのですが 私達は F ブランドを創りたいので そのために必要なモデルをベースに Fモデルを考えることにしました IS Fで始めた。

Fの想いを継承して認知を拡大できるベースモデルを 選択することにしました IS Fはお客様、クルマ好きの方やメディアの方には認知が浸透していましたが もっと多くの方に知って頂いて、クルマを楽しんで頂きたい 。

先ずは Fを多くの人に知ってもらい 楽しんでもらう 。そして、F が長いあいだ必要とされるために まず 認知を上げる。そのために 選んだベースモデルは IS ではなく RCでした。 クーペであるRCをベースにRC Fを提案。

この提案には 認知を向上させるために、レクサスのレース活動を  RC Fに集約すして RC Fの複数カテゴリーのレーシングカー開発も明示しました 。

そして、もうひとつ長年温めていた 企画がGS Fです IS Fを最初に提案するときに既にあったのが GS Fの企画です。

その後なんどか提案したのですが、 受け入れられずお蔵入りしていたのです 。

RC Fがクーペとなり IS Fの様に 4枚ドアを求める お客様がいることは十分に予測の範囲であり、今が好機と 今度はなんとしてでも実現させると強い想いで RC Fの開発を GS Fを想定したものにしました 。ユニットの共用化等とRC Fからの進化を織込み 、RCFの一年後に発売すると言う企画を関係者と スタート、正式な認知をもらった時には試作車が出来上がっていました。

今後は、IS F同様に改良をこの2台で続けていくつもりでいます 。開発は2倍のスピード!とまではいかないまでも 1.5倍くらいでは進めていきたいと思っています。

まだまだ発展途上を認識して 多くの努力が必要ですが、夢をもって開発を続けることが 大切と思っています 。

2015年 リタイヤし Fの開発責任者は後継者に引き継ぎました。 これからは、多くの仲間に開発を託していきます。 きっと 新しい価値をもった Fモデルがでてくることと思います 。

Fは開発者だけでなく顧客の皆さん、関心を持っていただく 多くの皆さんと『夢』「を共用して創っていくモデルです 私もこれからもずっと皆さんと一緒に楽しみたいと思います。


LEXUS IS F 開発備忘録 目次はこちら

これから順次アップしていきます。
2015~2016年カートップ誌に連載していたストーリーの原文になります。あえて当時書いたままの文章です。

投稿者プロフィール

office F.Regulus 矢口幸彦
office F.Regulus 矢口幸彦
元トヨタ自動車株式会社 IS F, RC F, GS F開発責任者 矢口幸彦
個人事務所ならではの『One to One』のサービスで、ワクワクしながら笑顔になれる働き方をお手伝いします。